戸籍上に、あり得ないような超高齢者が生存していたっていいじゃないですか  その2

除籍作業後回し、紙だけで生きる超高齢者


 紙の上だけで生きる「超高齢者」の存在は、煩雑な除籍作業や戸籍の管理システムなど様々な要因が絡む。

 今後、全国の自治体でさらに広がるとみられ、戸籍制度のあり方が問われる事態となっている。

 戸籍の源流は、1871年に制定された戸籍法にさかのぼる。翌72年に初の全国戸籍調査が行われた。現在は、本籍地を置く市町村が、法務省からの委任事務として管理する。

 死亡届が出された場合、本籍地と住所地で連絡を取り合い、戸籍と住民登録を抹消する。問題になるのは、所在不明の場合だ。

 住民登録の抹消は、各自治体が所在不明を確認すれば、独自の権限で行える。だが、戸籍の場合、法律上、市町村に除籍する義務はない。市町村が法務省に除籍の申請を行い、同省の許可を受けることが必要で、市町村は手続きを後回しにしがちだという。

 もう一つの要因として、仮に戸籍が除籍されないままでも、当人の家族や市町村側に不利益や不都合がないことがある。

 戸籍は遺産相続などに利用されるが、年金や介護・福祉などの行政サービスは住民登録に基づいて提供される。戸籍に誤りがあっても、支給漏れや不正受給は起こりえないため、自治体側は「積極的に除籍を進める必要性は薄い」という。

 今後、ほかの市町村でも調査が進み、「超高齢者」の人数が膨らむのは必至だ。しかし、戸籍を紙で管理している自治体からは「書類を一つ一つ精査して、すべてを調査するのは不可能。何歳の人が何人いるか、想像もつかない」(大阪府松原市)との声も上がる。住民登録の時と同様、全体像を把握するのは困難とみられ、戸籍そのものの信頼も揺らぐことになりそうだ。

(2010年8月26日09時48分 読売新聞)


これが事業者などでは、いかに実態を役所(行政)及び取引相手・商売敵等に把握させないようにするか腐心するのは当たり前だったりするし、実体のない幽霊会社も珍しくはない、それを、たかが個人の戸籍上の生き死にについてまで、行政はあまさずきちんと把握管理しておけ、という観点でこの問題を見るのも何か歪んでいると思う。
引用記事にも、別にこれで実務には支障がなかったと指摘している。仕事に必要のない=意味のない情報集め業務など行なわないのは、行政も事業体であるからむしろ当然であった。
実体不明の戸籍を「正確」にすることよりも、現に存在して困ったり苦しんだりしている人を助けるのこそが行政の仕事である。

そもそも、日本式の戸籍という国民管理システムは世界では珍しいらしい。


(8月28日 追記)
実体が不明なのに、戸籍では生きていることになっている人がいるということは、逆に、実体があっても戸籍では死んでいる人とか、はじめから戸籍がない人とかも、かなりいるのだろう。別人の戸籍になっているケースもあるだろう。戸籍として問題にしたいなら、そういうケースの方であろう。
行政サービスの基本とされる住民登録にしても、実体不明なのにあるケースよりも、実体があるのに、住民登録がない・できないケースのフォローの方が重要である。


戸籍上に、あり得ないような超高齢者が生存していたっていいじゃないですか