ビーチ・ボーイズの『スマイル』を聴いた(→ *)ことで思い到ったのが、マイク・オールドフィールド『チューブラー・ベルズ』である。
『チューブラー・ベルズ』は、1973年にリリースされた、マイク・オールドフィールドの出世作にして代表作であり最高傑作ともいえる作品である。その時マイクは若干21歳だった。
マイク・オールドフィールドも偏執狂型完璧志向のミュージシャンであり、『チューブラー・ベルズ』にしても多くの楽器を一人で演奏した多重録音で作り上げられている。
そうした志向で神経も繊細だったマイクはやがて精神的ストレスが高じてダウンしてしまうのだが、数年間の休養と精神集中トレーニングなどで回復し、活動再開、人格も音楽性も以前よりもポジティブに変化し、現在に到るまで精力的に活動している。
このような完璧主義を追及して精神が参ってしまうあたりがブライアン・ウィルソンに通じるのだが、マイク・オールドフィールドの場合、ブライアンと違ってドラッグにはまっていなかった(少なくともひどく深入りはしなかったのだろう)ことが、早い立ち直りにつながったのだと思われる。
マイク・オールドフィールドは『チューブラー・ベルズ』という作品によほど思い入れがあったらしく、1990年代のはじめ頃から『チューブラー・ベルズ』の続編を次々に出すようになる。リメイクではなく、オリジナルの『チューブラー・ベルズ』のモチーフを下敷きに、その時々の音楽の要素、ニューエイジ、アンビエント、トランスなどを取り入れて新しい作品として展開していたが、2003年には、オリジナルの『チューブラー・ベルズ』をそっくり再演・再録した作品を作った。1973年当時のテクノロジーの限界を乗り越えるためだった。
このあたりは。ブライアン・ウィルソンが2004年にスマイルを再録の形で出したのも同じであろう。『チューブラー・ベルズ』はかつて完成していたが『スマイル』は完成していなかったのが違い。
ブライアン・ウィルソン版として出てビーチ・ボーイズ版としても出たことで『スマイル』はようやく過去の呪縛から自由になったといえる。
『スマイル』はここからさらに新しい形に展開していくだろうか?
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