山田正紀『神狩り』を読んでのメモ 論理記号について
山田正紀『神狩り』を読んだら、《古代文字》というものが重要なモチーフになっていて、その《古代文字》で書かれたテキストには二つの論理記号しか存在していず、通常の人間の言語は五つの論理記号を必要とするので、《古代文字》は人間の言語ではなく神の言語だ、といったことが書かれていた。(ちなみに、その《古代文字》の他の特徴は関係節が13重に入り組んでいることだという。)
そして、人間の言語にある五つの論理記号とは、かつ(∧)、または(∨)、ならば(→)、でない(¬)、必然である(□)、となっていた。
実は、∧、∨、→、¬の四つはもっと整理することができるのである。
p→q≡¬p∨q (「≡」は同値という意味)
なので、上記の四種類の記号は∧、∨、¬の三種類の記号だけで充分表現できる。
そして
¬(p∧q)≡¬p∨¬q (ド・モルガンの法則)
から
p∧q≡¬(¬p∨¬q)
なので、さらに∨、¬の二種類にまで減らすことができる。
ここで|という記号を導入する。
│は下の表の真理値を表す。(つまり、p|q≡¬(p∧q) ) pとqは同時に真にならないという概念と考えてもいい。
p | q | p|q |
---|---|---|
1 | 1 | 0 |
1 | 0 | 1 |
0 | 1 | 1 |
0 | 0 | 1 |
ここで
¬p≡p|p
p∨q≡(p|q)|(p|q)
となるので、結局、∧、∨、→、¬の四種類の記号は|一種類だけで表現することができる。
ゆえに、最初に挙げた五つの論理記号は結局、|、□の二つにまで整理することができることになる。
というわけで、人間の言語でも二つの論理記号で充分であり、二つしか論理記号を必要としていないからといって必ずしも神の言語であるとは限らないことになる。もちろん五種類論理記号があった方が人間にとってはるかに理解し易くなるのは確かである。必然(□)に加えて可能(◇)という記号があるとさらに分かり易くなる。
必然と可能については様相論理を参照。
(追記1)
「≡」は、(p→q)∧(q→p)という意味を表す。
(追記2)
「|」にはシェファーの棒記号という名が付いている。
(追記3)
命題論理なら上記の四種類の記号だけで充分だが(≡という記号を加えてもよい)、述語論理まで含めると、全ての(∀)と存在する(∃)という記号も必要になる。そして矛盾(⊥)という記号も加えると、様相論理を含まない場合の論理記号は全部で∧、∨、→、¬、⊥、∀、∃の七種類になる。
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