近年(10年ぐらい前から)、「違うよ」を「ちげーよ」というのを耳にします(目にします)。もっぱら若い男性がぞんざいな言い方として使っています。
「違うよ [tʃigau-yo]」が「ちげーよ [tʃige:-yo]」になる、[au]が[e:]になるような音変化は普通は起こらないものです。では「ちげーよ」とは何なのかといえば、動詞「違う」を形容詞と混同して、「でかい」が「でけー」に「すごい」が「すげー」になるような音変化に引かれた結果なのだと思われます。
また、動詞「違う」の連用形「違い」をもはや形容詞ととらえるようになったとも考えられます。「ちがかった」「ちがくない?」などの言い方もみられますが、これはまさに形容詞的な活用です。だから「ちげーよ」は心理的には「ちがいよ」なのかもしれません。
では、動詞「違う」が形容詞として捉えられるようになったのはなぜかと考えれば、「違う」のような性質や状態を表す言葉は形容詞的に感じられることと、さらに、英語の‘different’が形容詞であることも影響していそうです。
では将来的に「違う」は「違い」という形容詞化するのかといえば、そう簡単ではないかもしれません。日本語の形容詞は述語となるときに項を通常一項しかとれません。つまり「Aが○○い」といった言い方しかできません。動詞「違う」は項を二つとり「AとBが違う」といった言い方になります。だからこそ「違う」は動詞として存在しているのでしょう。「違う」が形容詞化するためにはこの用法の差を乗り越えなければならないでしょう。
なので「違う」は将来は動詞と形容詞の混合した特殊な活用に落ち着くのかもしれません。