命令形でない命令表現

たとえば、次のような状況があるとします。
遊びに夢中でなかなかご飯を食べようとしない子供に対しご飯を食べるよう親が命ずるとします。
その時
「(ご飯を)食べろ」(または「(ご飯を)食べなさい」)
というのがストレートな命令形です。
この時、命令形を使わず
「(ご飯を)食べる、食べる」
というせかし方もあるでしょう。
また
「(ご飯を)食べた、食べた」
ということもあるでしょう。
つまり動詞の非過去形(基本形)や過去形(タ形)が命令形の代わりに使われているわけです。一回言うだけでもかまいませんが重ねて言った方がより命令の感じが強くなります。
この場合の、基本形とタ形では微妙にニュアンスが違うように感じますが、うまく説明できません。仮に、タ形の方が早く片づけたいというニュアンスなのかな、としておきます。それが分ったらまた続きを書きます。


(追記)
益岡隆志・田窪行則『基礎日本語文法—改訂版—』(くろしお出版)には次のように書いてあります。

命令の形式には明示的なものと非明示的なものがある。明示的な命令とは、命令専用の形式のことであり、動詞の命令形、「動詞連用形+「なさい」」、動詞のテ形が使われる。(中略)
非明示的な命令では、単に、命令内容を提示して、態度や口調等で命令であることを示す。この場合、動詞の基本形や「動詞基本形+「こと/ように」」が使われる。前者は口頭での命令、後者は主に掲示や文書での命令に使われる。(中略)
非明示的な命令にはさらに、タ形で命令を表すものがある。これは、命令が遂行された結果を先取りしていると考えてもよいかもしれない。この形式は、多少苛立ちを含んだ場合が多く、命令内容がすぐ遂行されることを要求している。動詞を繰り返すことが多い。

(p.118-119)

基礎日本語文法・改訂版

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