死刑はなぜいけないのかと論理的に考えようとすると難しい

死刑廃止論として、死刑はなぜいけないのかと論理的に考えようとすると、結構難しい。


(1) 殺人は絶対にいけないのでたとえ刑罰としても行われてはならない。
だとすると、死刑のかわりに懲役や禁固、罰金だったらいいのかということになり、仮にそれならよいとするなら、なぜそれがよくて死刑だと駄目なのかと、問いは初めに戻る。人を殺すことがいけないのと同様に、人を閉じこめたり、強制労働をさせたり、金銭を奪ったりすることもいけないわけで、刑罰として懲役、禁固、罰金などが科されるのもよくないのではないか。刑罰は必ず何かしらの損害を受刑者にもたらす。殺しさえしなければいいのだというなら、やはり問いは初めに戻る。


(2) 死刑はとにかく残酷である。
これも、他の刑罰ならなぜ残酷ではないのかということになり、問題点は(1)と同様である。


(3) 冤罪だった時に死刑だと取り返しがつかない。


(1)、(2)の理由はあまり筋がよくない。死刑だけ特別にいけないとする根拠が薄くなってしまうのである。情緒に訴えるだけでしかない。ただし死刑廃止論から進んで刑罰そのものを全廃するべきだと考えているならそれでもいいかもしれない。それはそれで人道的見地から立派な主張である。しかしそれはもっと現実性は難しいだろう。
結局、(3)の理由しかないだろう。(3)にしても、懲役、禁固でも奪われた時間は取り返せないという問題はあることはあるが、死刑よりはまだましということになる。