言葉が異なって通じない者同士の間で、商売などを行うための最低限のコミュニケーションが取れるようにする必要から生じてくるごく簡易的な言語をピジン語という。それぞれの言語をミックスさせ文法もごく簡単にされた片言的な間に合わせ言語である。このようなピジン語であっても、ピジン語を母語とせざるをえないような環境で生まれてきた子供はピジン語をもっと体系の複雑になった本格的な言語であるクレオール語へと発達させる。
つまり幼い子供はピジン語を手がかりにクレオール語を自ら作りだすのである。(クレオール語発達のプロセスには必ずしもそうしたピジン語を経由しない場合もあるという。)
これは、人間の言語能力が生得的であることの傍証にもなり、また言語の起源についてもこのようにして生まれたのではないかと言われている。
大昔、たまたまごくごく簡単な言葉の使用を始めた人類の世代がいた。その原始言語を母語として育つ子供世代は自ずともっと複雑な言語へと発達させた。このようにして、原始的な言語が生まれてから二三世代のうちに本格的な人類の言語になった。つまり人類は長い時間をかけてすこしずつ言語を作り上げたのではなく、それはごく短い期間だった考えられる。言葉を生んだ集団が一つあったか複数あったか、こうしてできた言語が祖語となって現在の人類の言語にまでつながっていったのだろう。