ゴットのコペルニクス原理による未来予測

ゴットのコペルニクス原理による、今存在する事象が未来のいつまで続くかの予測である。これは以前「事象の地平線」として触れた説と同じである。


人間は宇宙の特権的な地位にいるわけではない。宇宙のどの場所も等価であると唱えたのがコペルニクスである。
宇宙物理学者J・リチャード・ゴットはこの考えに基づく未来予測方法を考案した。
現在、我々観測者がいる場所は特別な場所ではない。
我々はある事象のはじまりから終わりまでの期間のどこかに居合わせていると考える。その時点は特別な時点ではない。
すると、95%の確率で、ある事象が始まってから終るまでの期間の最初の2.5%を過ぎ最後の2.5%に到るまでの期間に居合わせている。(図1)
また、50%の確率で、その期間の1/4が過ぎ残りの1/4を迎えるまでの期間に居合わせている。(図2)
そこで、現在存在しているある現象が、始まってからいくら経過しているか分れば今後どれだけ続くかも計算できる。これにより未来を予測してみようというわけである。
つまり現在までの経過日数をa、今後の存続期間をxとすると、95%の確率でa×2.5/97.5 < x < a×97.5/2.5、50%の確率でa×25/75 < x < a×75/25、となるわけである。
この予測方法は、未来が不確定な事象を推測するのには使えるが、あらかじめ期間限定で存在している現象や、単純に機械的に進行し終わりが確定するような現象には適用できない。
そして、観測者が特別な時点にいないのが前提なので、現象の開始直後やじきに終るのが自明な時点にいる場合は、そこは局所的だが特権的な場所、すなわち期間の最初の2.5%内か最後の2.5%内だから、これを適用してはならない。例えば竣工直後のビルについてすぐ取り壊されるだろうとは言えないわけである。
直観的には、長く続いている物事ほどさらに長くし、歴史が浅いものは早く終了するかもしれない、ということである。


 図1


 図2



これにより、今存在するいろいろな現象や物事が今後いつまで続くか予測してみた。
下の表の見方は、例えば、95%の確率で菅政権は今後10.1日以上続くだろうが15327日(約42年)以内に終るだろうということで、菅政権が今後15327日続く可能性が95%あるということではない。ここでは、10.1日以上続き15327日以内に終る可能性が95%で131日以上続き1179日以内に終る可能性が50%の事象に現在我々が居合わせているということである。
つまり、菅政権が今後10.1日以上続く可能性は95%であり、131日以上続く可能性は50%である、とみるわけである。

現象と、始まった年 本日までの経過期間 単位 未来の存続期間(可能性95%) 未来の存続期間(可能性50%)
菅政権(2010年6月8日) 393 10.1―15327 131.0―1179
日本(7世紀後半頃(律令国家の成立)) 1300 33.3―50700 433.3―3900
近代国家としての日本(1868年) 143 3.7―5577 47.7―429
人類(ホモ・サピエンス)(約20万年前) 20万 5128.2―780万 6.7万―60万
アメリカ合衆国(1776年) 235 6.0―9165 8.3―705
化石燃料文明(19世紀) 200 5.1―7800 66.7―600
電気文明(19世紀) 200 5.1―7800 66.7―600
原子力文明(1942年) 69 1.8―2691 23.0―207
自動車(1870年) 141 3.6―5499 47.0―423
飛行機(1903年 108 2.8―4212 36.0―324
鉄道(1825年) 186 4.8―7254 62.0―558
テレビ(1935年) 76 1.9―2964 25.3―228
ラジオ(1920年 91 2.3―3549 30.3―273
電話(1876年) 135 3.5―5265 45.0―405
携帯電話(1987年) 23 0.6―897 7.7―69
コンピューター(1946年) 65 1.7―2535 21.7―195
パソコン(1976年) 35 0.9―1365 11.7―105
インターネット(1969年) 42 1.1―1638 14.0―126
インターネット(WWW)(1992年) 19 0.5―741 6.3―57
CD(1982年) 29 0.7—1131 9.7—87
仏教(紀元前6世紀頃) 2500 64.1―97500 833.3―7500
キリスト教(約2000年前) 2000 51.3―78000 666.7―6000
TV番組『クッキンアイドル アイ!マイ!まいん!』(2009年3月30日) 828 21.2―32292 276.0―2484
TVアニメ『サザエさん』(1969年10月5日) 42 1.1―1638 14.6―126
TVアニメ『ドラえもん』(1979年4月2日) 32 0.8―1248 10.7―96
iPod(2001年10月23日) 10 0.3―390 3.3―30
iPad(2010年4月3日) 459 11.8―17901 153―1377
ジャズ(20世紀初頭) 110 2.8―4290 36.7―330
ロック(1954年) 57 1.5―2223 19.0―171
ファンク(1965年) 46 1.2―1794 15.3―138
ヒップホップ(1970年代) 35 0.9―1365 11.7―105
雑誌『文藝春秋』(1923年1月) 88 2.3―3432 29.3―264
朝日新聞』(1879年) 132 3.4―5148 44.0―396
自民党(1955年) 56 1.4―2184 18.7―168
民主党(1998年) 13 0.3―507 4.3―39
福島第一原発事故(2011年3月11日) 117 3.0―4563 39.0―351
アフガニスタン紛争(米軍のアフガン侵攻)(2001年10月7日) 9.7 0.2―378 3.2―29
ローリングストーンズ(1963年) 48 1.2―1872 16.0―144
U2(1980年) 31 0.8―1209 10.3―93
AKB48(2006年) 5 0.1―195 1.7―15
六本木ヒルズ森タワー(2003年) 8 0.2―312 2.7―24
東京タワー(1958年) 53 1.4―2067 17.7―159
ラノベ涼宮ハルヒ』シリーズ(2003年) 8 0.2―312 2.7―24
野田政権(2011年9月2日) 57 1.5―2268 19.3―174
安倍政権(自民党政権)(2012年12月26日) 460 11.8—17940 153.3—1380

長続きしている物事は今後も長続きする可能性が高く、長続きしていない物事ははやく終る可能性が高いのである。
この表で言えば、パソコンはまだ何百年も使われるだろうが、iPadのようなタブレットは17901日(約49年)以内に新しい概念のデバイスに置き替わっているか廃れている可能性が高いし、東京タワーよりも六本木ヒルズの方がはやく取り壊されるだろう、となる。


参考文献

時間旅行者のための基礎知識

時間旅行者のための基礎知識

著者、J・リチャード・ゴットは宇宙物理学者。この本の終章に「コペルニクス原理による未来予測」の解説がある。


(7月18日追記)
上の表で日単位で存続予測をした項目のうち、7月18日現在、菅政権は続いているからこれについて予測は妥当であった。福島第一原発事故も収束の目処は立っていないので、これについても妥当であった。


(10月29日追記)
野田政権発足後2か月近く経過し初期の段階を過ぎたと思われるので表に追加してみた。
野田政権は95%の確立で今後1.5日以上続くが2268日(約6年2月)以内に終わり、50%の確率で19.3日以上続くが174日以内に終わることになる。


(追記3)
2014年4月に安倍政権も追加してみた。この様子だと安倍政権はかなり長期政権になる可能性が高い。


(追記4)
安倍政権は2020年8月24日で在任2799日と歴代最長政権になった。安倍政権はかなりの長期政権になるだろうという予測は当たった。


(追記5)
と思ったら2020年8月28日に安倍晋三総理は辞意を表明し9月中には辞める模様。歴代最長政権を達成したことでもう潮時かと思ったのか。