林月光その3 月光仮面劇場

ホモ雑誌『さぶ』に連載されていた林月光作画のホモ告白絵物語。読者投稿のホモ体験談を林月光氏が脚色して絵物語に仕立てたシリーズです。ここに挙げた例は1980年代初期頃のもの。ここでは「月光仮面劇場」というタイトルになっています。絵もオールカラーのグラビア。






この絵物語の文章部分

月光仮面劇場
怪奇小説
作・画 林月光


 僕が新宿駅頭で自分の詩集を売ったのは三十年も昔である。画学生の僕は学資不足をバイトで補ったが東北訛がひどくて喋れないし、のろまで夢想家の僕に出来るのは絵を入れた詩集のガリ版売りぐらいだった。
 だが当時は貧富の差が大きくて詩を読む階層は少く、空腹で立っている事も出来ない時の援いは夜の女達が同情買いしてくれる事だ。
 或る夜そんな女の一人でオカマの桃子が僕を花園街のおでん屋で奢ってくれた事がある。酒が入ると僕も男性の要求が起るし、店のママが二階を使っていゝと薦めたから初めて桃子と枕を共にしたものだ。桃子は僕が童貞と知って尺八を楽しんだが、彼女のアナルを攻めさせられた僕はあっけなく昇天して精力不足を思い知らされ、桃子が便所へ降りると酔いと疲れで寝込んでしまった。
 だが再び僕を勃起させ、夢心地にする舌技が始った。ふと気付くと中年の見知らぬ大男が桃子以上の激しさで僕の性感帯を攻撃中だ。ぎょッとした僕はいやあーと声を上げた。


 だが直ぐ男に唇を奪われ、既に僕の勃起が淫水まみれと気付くと、桃子だと思えばいゝやとホモを楽しむ気になり、桃子の真似を始めた。
 腰を上下すると快感が倍増したから男の褌をはずして握ってやると、彼の亀頭が狂おしく僕の内股を突上げてぬるぬるだ。僕のアヌスを狙う彼の男根は薄毛の内股に挟んでしごいたから忽ち果てゝいった。
 汚れた内股は彼が舌で始末したが僕はその口中へ思い切り発射してやったから征服感は僕の方に残って、
『この部屋は貴男のもんらしいな』
 と大人ぶって書棚に満載の本を見渡すと僕の汗を拭き乍ら彼は、
『俺は作家で此処が稿案を練る場所さ、男色は俺の小説の鍵なんだ。店も俺が出資者だが実は街頭で君に一眼惚れしてネ桃子に誘惑させたのさ、浪人貴公子風な君が大好きだ!!』
 と尚も唇も求めるからテレた僕は
『肌は真黒で痩せっぼの僕でも男色の魅力があれば売ってやるよ』
 どうせ飲屋の親爺の作家気取りさと判断したのは僕の大ミスだった。


 彼は推理小説の大家で、特に怪奇小感のヒット以来、ホモ趣味はネタ探しと解釈されて堂々と僕に本名の荒井先生と呼ばせて遊ぶ人だった。
 だが見かけより高齢で、僕を欧米へ留学させておいて他界したから荒井流怪奇とホモ趣味を僕が画家としてキャンバスに描き始めた。
 僕はホモSEXの感動を描く訳だから一作毎に新しい相手が必要で、スポーツクラブを転々探すうちに噂が拡がり、僕に憧れる選手も多くなり、抽象画だから写真のモデルの様に誰と判らずに金になるよとコーチにくどかせるのも荒井流である。
 僕は生来田舎者なので相手が知的な明智小五郎風な美青年なら黒蜥蜴になって悩ませるし、金田一耕助型なら潮騒の少年になった絵を描くから、ドラマチックな東洋のダリだと米国で人気が沸騰して、美術館から新作展示の注文まで来たのは館長が日本人ホモに傾倒している故だ。
 張切った僕だが超大作なので六ヶ月の期間が要る。今迄の様に一夜の契りの感動では続かぬホモの絵だ。


 モデルは僕と同棲出来る若者に限るがおいそれと見付かる訳がない。悩んでいるとその朝は朝刊が遅い事に気付き、散歩し乍ら配達少年の姿を探すうち足首を捻座した高校生の健が自転車を引ずって配する姿に出違った。彼は番犬に襲われたと裂けた短パンご押えたが性的魅力満点の逸物が覗き、僕の股間を熱くする。彼の配達を手伝い乍ら僕はホモ画家でモデルと同棲したいと打明け、米国見物の賞与つきで六箇月百万円の契約を申込むと、彼はアパート代が不要になるし、当分配達は無理だしと快諾して引起して来た。
 裸にすると日本の若武者風な美少年ぶりが益々魂力的で僕の画想がぐんぐんふくらむ。何も彼も初めての彼なのにSEX好きで夜明け迄も僕に抱き付き宇頂点にしてくれる子だ。役所へ彼の転居届をするよと本籍を尋ねた僕は顎然となった……。
 なんと荒井先生の甥に当る子で、先生が幼児の彼を抱いた写真まで見せたのだ!!偶然と云えるだろうか?吾々は怪奇な霊界の恋人達なんだ!?



★今回は因縁君の投書で仮名脚色だ★便箋でいゝよ君の運命的なSEXを華麗な絵物語で記録しよう★サン出版さぶ月光係宛

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