量子力学の基本方程式であるシュレーディンガー方程式がどうして導かれたのかについては曖昧なところがあるらしい

最近、物理学に興味が出て、量子力学の本を読んでみたりしています。
量子力学がどうしてそうなっているのか、いかにしてできたのかについて興味があったのですが、量子力学の基本方程式であるシュレーディンガー方程式に関して、いかにしてその方程式が導かれたのかについては、曖昧なところがあると知りました。
村上雅人『なるほど 量子力学 I』(海鳴社)という本に次のような記述がありました。

シュレーディンガーは、電子が波の性質を有するという前提をもとに、電子の運動を記述するシュレーディンガー方程式を完成させた。しかし、前節の取り扱いには、何か割り切れなさを感じるひとも居るかもしれない。なぜなら最初から電子の運動が


ψ(x,t)=Aexpi2π(x/λ-νt)


という波を表現する式によって記述できることを前提にして、単に、この式を偏微分しただけのことだからである。実際に、シュレーディンガー方程式が発表された時に、多くのひとが、その威力を認めたものの、いかにして、この方程式がえられたかという過程に対しては、疑問を抱いたと聞く。困ったことにシュレーディンガーも、どのような思考過程で、波動方程式をえるに至ったかを明らかにしていないのである。

(p.235)


また、小出昭一郎『量子力学(I)』(裳華房)には次のようにありました。

上の議論ではいかにも(2)や(4)式を導き出したように思えるかもしれないが、実はそうではない。ふつうの波動方程式にド・ブロイの関係式を適当に組み合わせて、もっともらしい形の式を出し、これが物質波の従うべき方程式なのではあるまいか、と想定しただけである。自然が果してこの方程式に従っているものかどうかは、これを具体的問題に適用してみてその結果が実測と合うかどうかによって確かめられる。シュレーディンガーは彼の方程式を水素原子の問題に適用して、その結果が正しく実験と合うことを示した。ゆえにわれわれはシュレーディンガー方程式(4)および(2)式を自然の基本法則として認めることにしよう。

(p.15)
{(-ℏ^2/2m)∇^2+V(r)}ϕ(r)=εϕ(r) (2)

{(-ℏ^2/2m)∇^2+V(r,t)}ψ(r,t)=iℏ∂ψ/∂t (4)


つまりシュレーディンガー方程式がどうして出てきたのかについては不明朗なところがあるようです。まるで降って湧いてできたかのごとくです。古典的物理量を演算子で置き換えるのも理論から導かれたものではないようです。しかし、実験とよく合うのでそれが受け入れられるようになったということのようです。適当に考えたものかもしれないのに実験と合ってしまったというのも不思議なことです。
どうしてそうなっているのか、いかにして導かれたのか、という疑問の答えは得られない訳ですが、そういうものだとして受け入れるしかないのでしょう。
また、量子力学はミクロのことを何でも説明する理論という訳ではなく,主に電子の振る舞いを記述するものであり、その他素粒子については、場の量子論という理論の範疇になります。


(追記)
シュレーディンガーは自分の作った波動方程式の解釈について、電子が実際に波であることを表しているとしていましたが、その絶対値の二乗が電子の存在する確率であるとする解釈の方が主流になったので、それが受け入れられず物理学から生物学へと転向したそうです。そちらでも立派な業績を残しました。


なるほど量子力学〈1〉

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量子力学〈1〉 (基礎物理学選書5A)

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