『ストリング理論は科学か―現代物理学と数学』を読んだ

ピーター・ウォイト『ストリング理論は科学か―現代物理学と数学』(青土社)を読んだ。
理論物理学を修めた数学者によるストリング理論(超弦理論超ひも理論)の批判である。
一般読者向けに数式は避けられているが難解な概念が次々と出てくる。
加速器の発達の話や、素粒子物理学での対称性や群論の重要性の話など、素粒子物理学発展史としても興味深かった。
ストリング理論は実際には理論ではなく理論が存在するという期待の集合に過ぎず、実験的に検証できる予測を何も出せずにいる科学として失敗した理論だという。これを、間違ってさえいない、と形容している。にもかかわらずストリング理論が理論物理学界で主流になり権威のようになってしまっている現状を憂いている。
ストリング理論の人間原理的解釈も批判している。

ストリング理論を検証できるほどの高エネルギーの加速器を造ろうと思ったら、銀河系と同じくらいの大きさになってしまうそうなので、実際的には不可能といって良い。(また別の方法で検証が可能になる場合もなくはないだろうが)
実験的に検証できるものだけが科学であるというのはもっともな話ではあるが、自然法則は必ず人間が実験的に検証できるように作られているはずだというのも、また一種の人間原理的発想なのではないかと思わないでもない。そう都合よくいくものだろうか。
実験的に確かめられることの範囲でしか語ってはならないというのも科学探究においてつまらないように思う。

ストリング理論は科学か―現代物理学と数学

ストリング理論は科学か―現代物理学と数学