「うまー」「すごー」「わるー」等の言い方について

近頃、くだけた言い方でたとえば
うまい→うまー
すごい→すごー
わるい→わるー
のようになるのが見られます。会話体の文章で見られることが多いです。


従来的(伝統的?)にはくだけた言い方だとたとえば
うまい→うめー(うめえ)
すごい→すげー(すげえ)
わるい→わりー(わりい)
となるのが普通でした。つまり母音の発音が、[ai]>[e:]、[oi]>[e:]、[ui]>[i:] と変化するわけで、詳細は省きますがこの方が音声的にも自然な変化なのです。
今でもこう言うのがむしろ普通ですね。


ではなぜ近頃「うまー」「すごー」「わるー」等のような言い方も現れてきたのか。
どうやら、従来的なくだけた言い方だとぞんざいすぎるとする意識が起こってきたためだと思われます。カジュアルな雰囲気を出すためにくだけた表現をしたいが、従来的なくだけた言い方だと荒っぽくなりすぎて使いづらい。そこで柔らかい印象のくだけた言い方として「うまー」「すごー」「わるー」等が自然発生的に現れ、女性的なくだけた言い方として使われることが多いようです。女性が「うめえ」とは言いづらい書きづらいけれど、「うまー」なら抵抗なく使えるという感覚でしょう。
使われ方をみると、「うまー」「すごー」「わるー」等は、「うまい(うめー)」「すごい(すげー)」「わるい(わりー)」等とは微妙に異なり、たとえば、「ラーメンうまー」「感じわるー」と言うけど「うまーラーメン」「わるー感じ」とは言わないなどの用法上の違いもあります。つまり述語にはなるけど修飾語にはならないわけです。この理由はよく分かりません。今後の研究課題です。あるいは、「ラーメンうまー」のような言い方が「ラーメンがうまい」という意味でなく「うまいラーメン」という意味を持ちはじめているなら、修飾語が後置されていることになり、修飾語を前置するシステムであった日本語として大変化が起こっていることになります。