稲垣足穂がビールを夕食にしている

稲垣足穂のある日の夕食はビールであった。
これは、「アサヒグラフ」に載っていた「わが家の夕めし」という著名人の夕食風景を紹介するコーナーの昭和46年4月9日の回である。稲垣足穂が夫人とともにビールを飲んでいる。肴もなくビールのみ。
この写真に添えられた足穂のエッセイには、肉類は血を濁らせる、などと書いているが、なぜビールなのか? の説明は一切なし。
日頃何を食べているか、何を食べてきたか、何を食べたいと思っているか、一向に覚えがない、とも書いているので、夕食としてビールの姿を出すのも、食べ物のことなんか気にしとらん、という酒好きの足穂流の皮肉・ダンディズムの表れだろう。
今なら、夕食はビール、なんてやって見せたら、ふざけ過ぎ、不健康、アル中、夫人にもそんな変な食生活を強いるな、などとクソマジメに受け取られて非難されそうである。