映画『悪の教典』を観た

いま非常に評判が良い映画『悪の教典』を観ました。評判通り面白かった。
映画を観にいったのは十数年ぶりで、前回観たのが『ハンニバル』だったから、そんな映画ばかり観たがるのは病んでいるのかもしれません。
悪の教典』は、高校で生徒に「ハスミン」というあだ名で呼ばれる人気者で学校からの信頼も厚い英語教師蓮実聖司(もちろん二枚目)が実は他人への共感能力を全く持たない反社会性人格障害サイコパス」であり、自分の邪魔になる人間を平然と始末する殺人を重ねていくという話で、貴志祐介の同名小説が原作です。
前半は正義感の熱血教師かと見えた蓮実が女子生徒と関係を持ったあたりから彼の本性が見えはじめ、後半はある殺人の躓きから蓮実がそれを隠蔽するために生徒を猟銃で皆殺しにしていく凄まじい描写です。蓮実は凶暴というより淡々とむしろ事務的に殺人をするのが怖いです。冷酷な殺人マシンと化すのではなく生身くさい部分も結構残っている独特のキャラクターです。蓮実役の伊藤英明は後半になると目が据わっていき非常に迫真感のある演技でした。普段映画もテレビも観ないのでこの役者さんもよく知らないのですが「ハスミン」みたいな人物がいたらこういうタイプだろうという説得力が非常にありました。
蓮実がなぜそんな人格なのかという点はよく分からなくてそこがちょっと弱い感はありました。映画ではわずかに触れられるだけだった生い立ちや過去の犯罪に関係があるようですし、もっと詳しく描かれているだろう原作も読んでみたくなりました。
しかし、貴志祐介作品は後味の悪さが特徴的ですね。むちゃくちゃ不快というわけでもないですが後味がもやもやとする。初期の『黒い家』とか『クリムゾンの迷宮』とかもそうだったし、『青い炎』そう、最近のだと『新世界より』もそうでした。
悪の教典』にも続編が構想されているらしくいったいあの後どうするのかとすごく気になります。蓮実はラストで警察に逮捕されるのですが、あれだけの犯罪をしたらいくら狂人を装っても死刑は免れないでしょうから、それこそ『ハンニバル』のように脱獄して別人となって生きるのか?
あと、蓮実が山の中の廃屋のような家に住んでボロボロの軽トラで通勤しているのも印象的でした。


(追記)
原作を読んだ。