子の才能わかる?遺伝子検査つき本 専門家は否定的
2011年6月27日3時4分
病気予防や肥満対策が主流だった遺伝子検査ビジネスの世界に、「才能や感性がわかる」という触れ込みの「新手」が登場している。専門家は検査結果を簡単に能力に結びつけることに否定的だが、子供を持つ親を中心に利用されている。
宝島社は5月、ムック本「潜在能力がわかる!遺伝子検査」(1600円)を発売した。表紙で「あなたと、あなたの子供の『隠れた才能』がわかる」とうたう。
付録として同封された綿棒で口内の粘膜をこすりとり、中国の政府機関が出資する会社で検査する。特定の遺伝子がそれぞれ「色彩感覚」「チャレンジ精神」など15項目に関係するとし、検査を元に「優秀」「良好」「一般」「不利」の4段階評価した結果が約2カ月で届く。料金は1項目なら1050円または2100円だ。
初版2万部。これまでの被験者の半数以上が10歳以下。調べた項目は「頭の回転の速さ」など学習能力が6割以上で、「社交性」など性格関係の分野が続く。宝島社の編集者は「性格や潜在能力を知る一つの尺度になる。遺伝子という時代の流れをとらえ、社会に示したかった」と話す。
だが慶応大の安藤寿康教授(行動遺伝学)は「2万以上ある中の一つの遺伝子の働きは、いわばオーケストラの中の1人の演奏。一つで説明できるのは能力のごく一部にすぎない」と検査の意義を疑問視する。
藤田保健衛生大の宮川剛教授(行動神経科学)は「血液型占いは科学的でないという合意があるので、批判されない。遺伝子検査は科学だが、検査結果を能力に結びつける解釈は『占い』に近い。そのために反発が起きる」と話している。
一方、近い将来、自分の遺伝子を調べるのは当たり前のことになるとみる。「これを機に今から遺伝子との付き合い方を考えるのもいい」
同じ中国の会社と提携し検査と育児相談を始めると昨年発表した都内の会社は3日後、中止を決めた。ネット上で「子供の選択を狭める」など批判が相次いだからだ。日本人類遺伝学会も昨年、医療機関を通さない検査の弊害を指摘した。
(高重治香)
(朝日新聞)
私が以前にも思ったように(→ ここやここ)、自分の能力や適性があらかじめ分れば、芽が出ない種に一生懸命水や肥料を与える徒労(伸びる見込みのない才能を伸ばす努力をする徒労)をしなくても済む(やらされなくても済む)ので、それにこしたことはないが、この記事の専門家の指摘のように、人間の才能・能力・性格・適性などは遺伝子をちょっと調べてすぐ結果が出せるほど簡単には分らないのが現状だろう。
いまのところ、人生には、さんざんやった末、はじめてできない・才能がないと分る徒労はどうしても避けられない部分がある。
将来的にもっと研究が進めば、確度の高い検査法も現れてくるだろう。
才能を存分に発揮して業績を残すのも人生だし、一生かかって自分には成果を残せる才能は何もなく人生全てが無駄だったという真理に到達するのも仙人の境地のようで悪くないが、しかし?