村井康彦『出雲と大和 —古代国家の原像をたずねて』(岩波新書)という本を読みました。
- 作者: 村井康彦
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2013/01/23
- メディア: 新書
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内容(「BOOK」データベースより)
大和の中心にある三輪山になぜ出雲の神様が祭られているのか?それは出雲勢力が大和に早くから進出し、邪馬台国を創ったのも出雲の人々だったからではないか?ゆかりの地を歩きながら、記紀・出雲国風土記・魏志倭人伝等を読み解き、古代世界における出雲の存在と役割にせまる。古代史理解に新たな観点を打ちだす一冊。
出雲勢力が早くから大和に進出していて邪馬台国もその勢力が建てた国であるが、南九州から来た勢力によって滅ぼされ、その勢力が後の大和朝廷になり、神武東征伝説はその出来事を表している、という内容(そこまでが前半の内容で、後半は邪馬台国後の初期大和王権がどう発展していったかについて)で、非常に興味深いものでした。邪馬台国畿内説を取りながら、邪馬台国が後の大和朝廷(天皇家)には連続していないとする論に新味がありました。ただの思いつきではなく、文献や考古学、各地の神社の伝承などから考証されています。たとえば、魏志倭人伝にある邪馬台国の四官名が大和盆地にある地名と共通している、といった考察もなされます。水行や陸行といった邪馬台国へのコースは瀬戸内海ルートではなく日本海ルートであるとし、出雲地方自体は投馬国にあたるとしています。
この本を読んで考えてみたのですが、出雲勢力とは縄文系土着勢力ではないでしょうか。出雲の方言には東北方言と共通する点(いわゆるズーズー弁)がみられます。これを東北と共通する縄文要素の残滓と考えれば、前時代から続く勢力がまだ力を持っていたのが、つまり出雲勢力だったのではないでしょうか。この本では、古い磐座信仰、巨石信仰を出雲系の信仰として挙げていますが、そこにも原始宗教から続く要素がうかがえます。出雲には特に目立った縄文遺跡はないらしいのですが、別に出雲自体が縄文時代に先進地域でなくても構いません。
専門的な評価は分りませんが、あたかも推理小説を読むような趣があり、色々なことを考えさせてくれる、興味深い本でした。