売国・愛国を見分ける表だそうです  そして昭和初期の少年小説へのプロローグ

ネットでこんな表を見つけました。

http://www35.atwiki.jp/kolia/pages/195.html
ずいぶん、浅い分類だなあ、と思いました。国を売る話なのに、もっとも重要な経済・財政の要素には何も触れられていないし、外交や国際関係についても部分的なことだけにこだわっている。文化にも無関係、社会的要素もほとんどない。もっぱら近代史の解釈論が主眼らしいです。
この表を作った人は、それなりに国を憂いていたのでしょうが、真の売国奴は、こんな基準でいいならむしろ高笑いしていられることでしょう。


さて、これで思い起こされたのは、昭和初期の少年小説『ああ玉杯に花うけて』(佐藤紅緑著)です。この小説の中に、塾の師匠(この作品の胆になる人物)が生徒と問答して、
「きみらはなにをもって悪い人物、よい人物を区別するか」
「君には不忠、親には不幸なるものは、他にどんな良いことをしても悪い人物です、忠孝の士は他に欠点があってもよい人物です」
「よしッ、それでよい」
という場面があるのです。
この表には、この問答を思わせる幼稚さがあります。
(ちなみにここで日本史上の悪人として引き合いに出されている人物は、弓削道鏡蘇我入鹿足利尊氏源義経武田信玄徳川家康、など)


でも、この小説自体は、自分は嫌いではないのです。むしろ、素晴らしい作品だと思います。このように時代に制約されている部分もありますが、この作品で作者が少年読者に投げかけているテーマは、古来普遍のものであり、読みようによっては非常に現代的な作品でもあります。
この小説については、いずれ詳しく論じるつもりです。