褒めるより叱った方が伸びるという考え

スポーツなどの指導者は、褒めるより叱った方が伸びると言ったりします。
褒めて甘やかすと慢心して成績が悪くなるが、叱って厳しくすれば真剣になって成績が上がるというわけです。指導者としてある程度の経験的事実に基づいてこう考えているようです。
しかし、これは「平均への回帰」ということで説明がつくといわれています。
まず、どういう時に褒め、どういう時に叱るか考えてみれば分りやすいでしょう。褒める時は良い成績を上げた時であり、叱るのは成績不振の時です。つまり平均から良い方向や悪い方向へ偏りが生じた時に褒めたり叱ったりするわけです。ここで、褒めたあとに成績が下がったり、叱ったあとに成績が伸びたりすれば、褒めるより叱った方が伸びるのだと考えがちです。けれども、一時的に良い成績になったり悪い成績になったりしても、長期的に見れば平均的な成績になっていることが普通です。良い成績を上げたあとにはさらに良い成績になるより平均的な成績に落ち着くだろうし、悪い成績の場合もさらに悪くなるよりは平均的な成績に戻るでしょう。こうしたことを「平均への回帰」といいます。なので、褒めたあとに成績が悪くなったり、叱ったあとに成績が上がったとしても、褒めたり叱ったりしたことの効果ではなく、ただ「平均への回帰」をしただけということになります。
ですから、叱った方が良いと考えてやたらとスパルタ主義に走ったところで意味はないということになるのです。