「してくる」という表現について

「してくる」(「してきた」)という表現にもいくつかタイプがある。
たとえば

(1) 私は解らない問題を先生に聞いてきた。
(2) 雨が降ってきた。
(3) 私は長年色々なことを勉強してきた。

などの「きた」はそれぞれ意味が異なる。


(1)は、「先生のところへ行って問題を尋ね戻って来た」という意味だから「きた(来た)」には移動を伴う動作としての意味がある。
(2)は、「雨が降り出した」という意味だから、「きた(来た)」には動作としての意味がなくなり、純然たるアスペクトを表すだけになっている。
(3)は、「色々なことを勉強して現在に到っている」という意味だから、「きた(来た)」には時間の中を進んで来たという移動を伴う動作的な意味が多少残っている。


動詞の空間的意味を時間的意味に転用するとアスペクト化が起こる。(3)はその途中の段階と考えられる。(1)にも若干アスペクト的意味がある。