いま伊藤計劃『屍者の帝国』を読んでいる。

いま伊藤計劃円城塔屍者の帝国』を読んでいる。まだ前半の方だが、『虐殺機関』『ハーモニー』に引き続き言語学ネタがチラチラ出てくるのも興味深い。
ひょっとしたらこういうオチなんじゃないかなという一つの推測を持ったのだが、それが当たっているかどうか楽しみにして読み進めていく。
ストーリーは、19世紀後半、死体が魂を持たない「屍者」として生き返らされ一種のロボットとして産業から軍事までさまざまな分野で働いていて、機械式コンピューター解析機関のネットワークがインターネットのように地球上に張り巡らされている世界で、諜報部員としてスカウトされた医学生ワトソンが、アフガニスタンの奥地にある「屍者の帝国」の探索に派遣され、舞台は日本、アメリカへと移り、行方不明になっている「ザ・ワン」と呼ばれる最初の「屍者」(フランケンシュタインの怪物)を追跡していくという話である。ワトソンという名からも分かるように彼は後のシャーロック・ホームズの相棒である。このように19世紀の話がごった煮のように詰め込まれている。さらに、伊藤計劃作品ではおなじみの戦争請負会社なども重要な要素として出てくるので、21世紀の世界を19世紀文明で構築したような世界観となっている。(たとえば骨相学のような現代では否定されている理論もここでは科学として成り立っている。)

屍者の帝国

屍者の帝国

内容紹介
フランケンシュタインの技術が全世界に拡散した19世紀末、英国政府機関の密命を受け、秘密諜報員ワトソンの冒険がいま始まる。日本SF大賞作家×芥川賞作家、最強コンビが贈る超大作。

(追記)
読み終わった。
自分が推測したのは、架空歴史ものであるストーリーがどこかで現実の世界と接点を持つ一種のメタ構造になっているのではないか、ということなのだが、最後まで架空歴史ストーリーで押し切って終わっていた。人間の意識がテーマになっているところは『ハーモニー』との関連性を窺わせた。
そういえば、フランケンシュタインや解析機関が出てくる架空現実テーマの話は、山田正紀『エイダ』だった。自分はそれが念頭にあったんだな。