短調が物悲しいのはなぜか

スティーブン・ピンカー『心の仕組み』は話題が豊富で教えられることも多く非常に興味深い本ですが、その下巻に音楽を扱ったトピックがあり、短調というか短調の元になる短三度の和音を心はなぜ物悲しいと感じるのかについて、一つの見解が述べてありました。
それによると、和音が単純な比例関係にある倍音どうしだと一つの音源から出た可能性が高く、音源の出所が分かりやすいのに対し、短三度などの比例関係が複雑な和音は複数の音源から出た可能性があり、音源の出所が一つに定まらないと心が判断することで、不安感を引き起こし物悲しく感じるのではないか、ということでした。つまり音がなにか脅威の兆候である時、音源すなわち脅威の源の数を推測できればそれだけ対処も早くなり生存にも有利である、ということで心がそのように進化してきたというわけです。
テンションコードなどが強い緊張感をもたらすのはまさにその理由だと思われますが、短調のつまりマイナーコードの物悲しさはそれだけでは説明がつかないような気もします。では何かといわれてもはっきり分かりませんが、泣き声のようなものに関係があるのかもしれません。

心の仕組み 上 (ちくま学芸文庫)

心の仕組み 上 (ちくま学芸文庫)

心の仕組み 下 (ちくま学芸文庫)

心の仕組み 下 (ちくま学芸文庫)