「〜ている」と「〜てある」

「〜ている」と「〜てある」で表されるアスペクトについて。


まず自動詞と他動詞がペアになっているものを考えてみる。

自動詞「重なる」の例でいうと、「〜が重なっている」というのは、何かが重なりその状態が持続していることを表す完了相である。

他動詞「重ねる」の場合、「〜を重ねている」というと、何かを重ねるという行為を進行(継続)中であることを表す進行相である。(文脈によっては完了相にならないわけでもない)

「〜を重ねてある」というと完了相であり、何かを重ねその結果が持続していることを表す。「〜が重ねてある」という自動詞的表現もできる。こうした場合、「重ねる」は他動詞だが、「〜が重ねてある」というと、目的語であった「重ねられたもの」が主格化する。

他動詞とペアになる自動詞は動作ではなく、主に状態や位置の変化などを表す。(非対格動詞)。意味の上から、進行相になることはほとんどない。


他動詞とペアにならない、動作を表す自動詞(非能格動詞)だと、例えば「走っている」は、動作が進行中であるから、進行相である。(文脈によっては完了相にならないわけでもない)


自動詞とペアにならない、動作を表す他動詞だと、例えば「食べている」は、進行と完了をともに表している。その違いは文脈による。
例えば、「いま朝食を食べている」と言えば進行相であり、「既に朝食を食べている」と言えば完了相である。


動作を表す自動詞・他動詞の場合、動作の結果を重視する場合は「〜てある」ということもありえる。
例えば、「夕食が遅くなるので昼食をお腹一杯食べてある」とか、自動詞であっても、「身体を暖めるため充分に走ってある」といった表現ができないわけでもない。


「壁に字が書いてある」といった表現の場合は、むしろ「(〜が)書いてある」全体で事態を表す一つの動詞とも考えられる。


(追記1)
非能格動詞は主語だけをとる、非対格動詞は目的語だけをとる、他動詞は主語と目的語の両方をとると考える。


(追記2)
非対格動詞(能格動詞)の「主語」は基底では「目的語」として生成され、それが「主語」の位置に移動してくるとする考え方がある。日本語だと、「壊れる」「壊す」「固まる」「固める」といった自動詞と他動詞が対になっている自動詞が非対格動詞に当たり、この場合の自動詞の主語(ガ格)とされるものは他動詞の目的語(ヲ格)に当たる。
パソコンが(主語)壊れる。←→パソコンを(目的語)壊す。
ゼリーが(主語)固まる。←→ゼリーを(目的語)固める。