論理学の練習問題

「ご飯を食べ過ぎると太る」と「ご飯を食べ過ぎかつ太らない、ということはない」は論理的に同じことを表している。
これは以下のように考える。
「ご飯を食べ過ぎる」という命題をPと置き、「太る」という命題をQと置く。
すると「ご飯を食べ過ぎると太る」はすなわち「PならばQ」ということである。
これを記号であらわすと P→Q となる。→は「ならば」を意味する記号である。
命題P、命題Q、の真偽によって、命題 P→Q の真偽は次の真理表のようになる。真を1、偽を0で表す。

P Q P→Q
(1) 1 1  1
(2) 1 0  0
(3) 0 1  1
(4) 0 0  1


(3)は説明がいるかもしれない。Pが偽でQが真のとき、PならばQが真となぜ言えるのか。
先のご飯の例で言うと、これは、「ご飯を食べ過ぎないならば太る」とすれば奇妙な感じがする。
実は、P→Q というのは、Pという条件が成立すればQとなるといっているだけであり、Pという条件が成立しなかった時のことは語っていない。だからPという条件が成り立たない時にQとなってもいいしならなくてもいいのである。集合で考えると、Qという集合の中にPという部分集合または要素があるということである。P以外の領域は集合Qの中だけでなくその外側にも広がっているわけだから、PでないときにQであってもQでなくてもよいのである。
だから(3)はもっと日常的な表現にすれば「PでないけどQになる」ということであり、ご飯の例で言えば、「ご飯を食べ過ぎないけど太る」となる。ご飯の食べ過ぎ以外にも太る原因はあるのだから別にこれはおかしくない。即ち正しいこと(真)を言っているのである。
次に、「ご飯を食べ過ぎかつ太らない、ということはない」は、記号で表すと、¬(P∧¬Q) となる。∧は「かつ」を表し¬は「〜でない」を表す。
¬(P∧¬Q) の真偽はつぎの真理表のようになる。分かりやすようP∧¬Qの真偽と合わせて書く。つまりその反対ということである。

P Q P∧¬Q ¬(P∧¬Q)
(1) 1 1 0 1
(2) 1 0 1 0
(3) 0 1 0 1
(4) 0 0 0 1


これで分かるように¬(P∧¬Q) の真偽のパターンはP→Qの真偽のパターンと同じである。
すなわち論理的には同じことを表しているのである。
だから「ご飯を食べ過ぎると太る」と「ご飯を食べ過ぎかつ太らない、ということはない」は論理的には等しいのである。


言語学をやるためには論理学もきちんと押さえておかなければならないので併せて勉強しているわけである。
このあたりはごく初歩の段階だが、古典的な論理学では扱えなかった概念まで扱えるように拡張した論理学である「様相論理」などを聞くとわくわくするものを感じる。それはまた次の機会に。