飲み過ぎは4兆円の損…たばこといい勝負?
アルコールの飲み過ぎによる社会的損失が年間4兆1483億円に達することが、厚生労働省研究班の推計でわかった。
研究班の尾崎米厚(おさきよねあつ)
・鳥取大准教授(環境予防医学)らは、肝硬変の40%、浴槽での溺死の34%などがアルコールに起因するとする米国の研究を参考に、2008年の人口動態統計や患者調査のデータで推計。飲み過ぎで、脳卒中、がんなどの病気やけがの患者が計24万6000人、死者が3万5000人増えたとした。治療に1兆226億円かかり、69歳まで生きた場合に受け取れた賃金1兆762億円を失ったと見積もった。研究班の調査で、働いている人でも男性の5・9%、女性の1・7%が「人間関係にひびが入った」「二日酔いで仕事を休む」などの飲酒による問題を抱えていた。こうした問題で労働生産性が21%低下するとの研究があり、損失は1兆9700億円になった。
さらに、飲酒交通事故なども考慮。総額は、たばこの社会的な損失(5兆〜7兆円)にほぼ匹敵した。
(2012年2月9日01時38分 読売新聞)
さらに「人間関係にひびが入った」「二日酔いで仕事を休んだ」程度で済まない、飲酒による人格の崩壊、家庭の崩壊、社会生活の崩壊、酔っ払いによる暴行・暴力の害、アルハラの害を勘定に入れれば、飲酒の社会的損失はもっと甚大になるだろう。
もはや酒害を根絶するためには、全面禁酒が望ましいが、そこまでいかなくとも、飲酒許可制度(→ *)を導入し、野放図な飲酒を規制しよう。
私事になるが、私は父親がアル中の酒乱だったから、飲酒がさまざまな面で大きな被害と損害を家庭・家族に及ぼすことを実感している。
私の父親は特に患いもせず平均寿命程度は生きたから、そこだけ見れば飲酒の害はなかったということになるかもしれないが、そんな即物的で皮相的な見方で酒害を計ることはできない。酒害は直接健康に影響を及ぼすハード面よりも飲酒することで引き起こされるソフト面の害こそがさらに深刻なのである。
酒の害は、もっぱら健康的被害というハード面に限定される煙草の害と、ここが違う。
自分は行儀よく飲んでいるからあるいは少なくとも人に迷惑をかけない飲み方をしているからと飲酒を擁護する人もいるが、そうやってお酒が飲める(=酒が存在して自由に飲むことができる状態にある)こと自体が自己および他者の飲酒による無数の犠牲者・被害者の存在を前提に成立していることを忘れてはならない。