かつて首相官邸の裏にあった廃墟

1990年代の初期頃まで、首相官邸の裏に廃墟群が放置されていたり、非常に古いアパート群が残っていたりしましたが、2002年までに首相官邸が新官邸になり敷地も拡大される工事にともなって姿を消したようです。
これらは以前も載せたことがありますが、今回は昔の航空写真と照合して場所を特定します。


写真1. 現在の首相官邸周辺 樹木で囲われている区画が現在の首相官邸の敷地。


写真2. 昭和38年の写真1と同じ範囲 緑線で囲まれている部分が当時の首相官邸の敷地。


写真3. 写真2の中央部分拡大。



写真4. 首相官邸裏にあった古いアパート群。昭和末期頃撮影。
写真3の赤線で囲まれた部分にあたります。そこを南東方向から見たもの。高台にある首相官邸の方から下った敷地にありました。いつごろの建物かはっきりしませんが円窓を用いるあたりからみて戦前の建築ではないかと思われます。公務員宿舎として使われていたようです。場所的に考えて首相官邸の職員のための宿舎だったのかもしれません。(追記:総理府官舎といわれていました。)



写真5. 電気試験所永田町分室の廃墟。昭和末期頃撮影。
写真3の青枠の部分にあたります。そこを、東方向から見たもの。この建物及びその周囲の建物が電気試験所永田町分室や官庁の庁舎として使われていたようです。その後廃墟化して1990年代のはじめ頃まで放置されていました。かつて首相官邸の正門脇の細い道を入って行くと、坂を下りつつこの廃墟群を見ながら外堀通りに到るのでした。首相官邸に隣接する場所に長いあいだ廃墟群があったというのも奇怪なことですが、逆にそんな場所だからこそなかなか撤去されなかった事情もあったのでしょう。

写真6. 同上。北東方向から見たもの。

電気試験所永田町分室は、逓信省技師吉田鐡郎の設計により1930年(昭和5年)に建てられました。(吉田鐡郎の建築構成原理再考参照)


写真3の中央部のカマボコ型?の構造物が気になるところですが、廃墟の写真の頃にはそれがあった記憶がないので多分撤去されていたのでしょう。カマボコ型なら進駐軍関係の施設だったのかもしれません。


goo 古地図 参照。
http://map.goo.ne.jp/