近代感覚と伝統の齟齬

 広がり続ける大麻汚染に、全国の神職らが心を痛めている。若者らの健康被害はもちろん、「大麻は麻薬」というイメージが定着してしまったからだ。
神社界にとっての大麻は、神棚にまつる伊勢神宮のお札で、麻薬とは無縁の神聖なもの。
伊勢神宮式年遷宮を4年後に控え、宮司らが「大麻取締法の名前を変えてほしい」 と声を上げ始めた。

神社本庁によると、全国8万の神社を中心に氏子に毎年頒布される伊勢神宮のお札は神宮大麻とも呼ばれ、900万体が頒布されている。ところが、今では 大麻は犯罪のイメージと結びつき、神職らも大きな声で参拝者に「大麻の頒布 です」と話しにくく、頒布が伸び悩んでいる。

 伊勢神宮は2013年に、20年に1度の式年遷宮を迎える。「遷宮までに、 大麻といえば神宮大麻というのが、世間の常識になってほしい」と近藤さんは 神社関係の集まりで訴えていく。
 ただ、厚生労働省の監視指導・麻薬対策課は伝統文化は尊重したいとしながらも「大麻大麻。法律名を変えるのは難しい」との見解だ。


一年ぐらい前の新聞記事(朝日新聞らしい)ですが、現代の感覚で伝統文化を見るとこういう齟齬を生じるのです。今は単なるお札である神宮大麻も起源は「大麻」そのものだったから大麻と呼び習わされてきたものです。神社側の、「大麻」は悪いものではない、という主張が、言葉としての大麻の悪いイメージを払いたいにとどまらず、その根源にまで向っていって欲しいものです。
これまで神社界としては、神道の性にまつわる部分は、近代の倫理に適合させて、淫祠邪教や単なる民俗扱いにして、現われないようにすることが出来ました。
しかし近現代の感覚にばかり気を取られていると、例えば、いずれ、社会の酒についての意識がさらに厳しくなると、お神酒をノンアルコール酒にせざるを得なくなるかも知れません。
伝統とか、宗教が、近現代の日常感覚とは異なるのは当然でもあるので、あまりそればかりに気を取られて本筋を見失わないで欲しいと思います。