きづきあきら+サトウナンキ『まんまんちゃん、あん。』を読んで

まんまんちゃん、あん。 第1巻 (バーズコミックス)

まんまんちゃん、あん。 第1巻 (バーズコミックス)

まんまんちゃん、あん。 第2巻 (バーズコミックス)

まんまんちゃん、あん。 第2巻 (バーズコミックス)

まんまんちゃん、あん。 第3巻 (バーズコミックス)

まんまんちゃん、あん。 第3巻 (バーズコミックス)

全三巻


この作家さんは、去年『つぼみ』誌で知って関心を持っていました。
さいきん、お寺を舞台に、お寺の跡継ぎと運営の問題を扱った興味深そうな、この作品を知る機会があり読んでみました。
まことに充実した読後感でした。


タイトルの、まんまんちゃん、とは関西の方での仏様の呼び方、あん、とはお祈りのことば、と説明されています。


舞台は、東京都下にあるらしい禅寺随徳寺、幼稚園や斎場なども持つ、それなりに大きなお寺でも、跡取り息子(副住職)になかなか嫁の来手がないことに悩んでいる。


主な登場人物は、


めぐり・・・・主人公、初登場時は高校生、巨乳、明るい頑張り屋の働き者、実家は経営の厳しい商売をやっている子だくさん。長姉は経済的に進学を諦めるほど。バイト先の婦人に寺の嫁として薦められるちょっとした縁で、信玄に一目惚れ卒業を待って寺に嫁入り

信玄・・・・随徳寺の長男、30代?、なかなか悟った人物、めぐりと結婚するも、新婚2か月で事故死

一円・・・・信玄の弟、岬という恋人がいる

恵春・・・・一般家庭の出で、発心して出家、随徳寺で修業中

慈恩・・・・僧侶だが初登場時は俗人のキザな遊び人風、信玄がいなくなって人手不足の随徳寺に入る

信玄の父(住職)・・・・もとは先代の住職が引き取った孤児だが、寺を嗣いだ、鷹揚そうな人物

信玄の母・・・・若いころはヒッピー娘風で、寺に見合いで嫁入りする前は学生運動の闘士?の恋人がいた。もし実子に嫁が来なければ、行く末、寺から出なければならなくなることに悩んでいる

黒柳・・・・檀家総代、何やら思惑があるらしい

岬・・・・一円の恋人。一円のことが好きでも、寺の嫁になることは躊躇している


みなそれぞれの形として理想と現実を持つ若い僧侶たち、彼らとめぐりの、檀家さんたちの、住職夫妻(特に妻)の生活と葛藤が、力強い独特の描線で、生き生きと描写されます。テーマはけっこう重くても過度に深刻にはならず、ムードは基本的には明るい物語です。

いろいろ考えさせられる話ですが、話が始まってすぐ未亡人となってしまっためぐりがその後誰とくっつくのか、それとも? という四角関係恋愛漫画としての興味も充分。
ラストに「ん?」と含みを持たせる余地を残す構成は『つぼみ』の『エビスさんとホテイさん』と同じような作りなので、この作者の作風なのかもしれません。


そもそも、自分がこれを読む切っ掛けとなったのは、昨年に、末寺の後継問題で本山が跡継ぎ維持のため僧侶の見合い斡旋をはじめるというニュースを読んで、思うところがあったので、放言めいたことをこのブログに書きました、その後、同じテーマに言及したブログ「ひじる日々 東京寺男日記 Ehipassiko!」2009-06-19 『まんまんちゃん、あん。』が描いたものを知り、そこにこの漫画が紹介されていたのです。


自分が、百合漫画というジャンルに興味を待たねば、『つぼみ』を手にすることもなかったろうし、この作家さん(きづきあきら+サトウナンキ)になぜか惹かれることもなかった、自分がその春からブログを書き始めていなければ、先のニュースについて放言することも、それによりこちらのブログ様「ひじる日々 東京寺男日記 Ehipassiko!」を知ることもなかった、漫画が紹介されていても、この作者さんでなければ、ぜひすぐ読んでみようとはおもわなかったかもしれない。そして、読んで感動を味わうこともなかった。
こうしてみると、自分は、単なる偶然ではなく、何か出会うべくして読むべくしてこの作品を読んだのだという気がします。
大声で主張するつもりもありませんが、この世界には、偶然の重なり以上の相互関連性、仏教でいうところの「縁起」ようなものが存在することもあるのだという、日頃からの感を強くしました。


充実した気持ちを与えてくれた
作者きづきあきら+サトウナンキ様、紹介して下さったブログ様、そして釈迦牟尼世尊に、一切衆生に、薩婆訶。