『坊っちゃん』の不思議

夏目漱石坊っちゃん』を今日の感覚で読むと少し変に思われる点がいくつかあります。


1. 山嵐と対等の口調(タメ口)

山嵐「君は一体どこの産だ」
坊っちゃん「おれは江戸っ子だ」
山「うん、江戸っ子か、道理で負け惜しみが強いと思った」
坊「君はどこだ」
山「僕は会津だ」
坊「会津っぽか、強情な訳だ。今日の送別会へ行くのかい」

のような会話をしていますが、坊っちゃんは新任の数学教師であり、山嵐は数学主任であるから、先輩上役であり、こんな対等の口のきき方ではおかしいはずです。坊っちゃんが敬語を使えない訳でもなく、校長などにはちゃんと敬語で話している。


2. 生徒に全く愛着を持たず、教育への情熱も皆無
生徒については
「わざわざ東京から、こんな奴を教えに来たと思ったら情けなくなった」
「こんな卑劣な根性は封建時代から、養成したこの土地の習慣なんだから、いくら言って聞かしたって、教えてやったって、到底治りっこない」

なんて言っている。


3. 四国松山という土地を始終軽蔑している

四国松山という土地に対しては、
「野蛮な所だ」
「こんな所に住んで御城下だなどと威張ってる人間は可哀想なものだ」
「こんな田舎に居るのはのは堕落しに来ている様なものだ」
などと感想を吐き、果ては
「不浄の地」
とまで言っている。


最後の赤シャツをぶん殴るのだって、かなり私怨が入っていて、殴ったからといって何かが変わるような行為でもない。殴ったらもう後は土地から逃げ出すだけでした。
ようするに『坊っちゃん』というと熱血教師ものの走りのような先入観を持つが実際は全然違うのです。