言語学

信念の様相論理

先に信念を疑念と対にして考えてみたが、あまり適当ではなかったかもしれない。 そこで今回は信念の「信じる」を「思う」と対にして考えてみる。 □=¬◇¬、◇=¬□¬という関係において、「信じる」を□と置き、「思う」を◇と置くと、 「Pであると信じる」とは「Pで…

義務と許可の様相論理

義務と許可の様相論理は、必然を「義務である」、可能を「許可されている」と置き換えると、 「〜することが義務である」とは「〜しないことが許可されていない」 「〜することが許可されている」とは「〜しないことが義務でない」 とすることができる。 信…

「〜ている」と「〜てある」

「〜ている」と「〜てある」で表されるアスペクトについて。 まず自動詞と他動詞がペアになっているものを考えてみる。自動詞「重なる」の例でいうと、「〜が重なっている」というのは、何かが重なりその状態が持続していることを表す完了相である。他動詞「…

生成文法のXバー理論に関するメモ

生成文法のXバー理論では、すべての句(名詞句、動詞句、形容詞句など)が次のような構造をなしていると考える。 図1. 句の基本構造1 XPは名詞句、動詞句、形容詞句などの句(phrase)、主要部Xはその句の中心的な意味を担うもの(名詞、動詞、形容詞など)…

論理学の練習問題 様相論理

□(p→q)≡¬◇(p∧¬q) (pならばqであることが必然であるとは、pかつqでないことが可能でない、と同値である。) (証明)p→q≡¬(p∧¬q) なので(*1参照) □(p→q)=□¬(p∧¬q) □は¬◇¬で置き換えることが出来るので(*2参照) □¬(p∧¬q)=¬◇¬(¬(p∧¬q)) …

人間の能力は生得的であるとするチョムスキーの考え

チョムスキーは、言語能力を典型に、人間の能力は生得的に備わっているものであり、経験的に獲得されるものではないとする。(前者を合理主義、後者を経験主義という。) この考え方は一見「反動的」にも見える。人間は生まれで決まると言っているように見え…

自動詞と他動詞

いま自動詞と他動詞についてちょっと考察しているのだが、分りやすい参考書や文献はないかな。

言語哲学

最近は言語学への関心の派生として言語哲学の本を読んでいるが、人生とは何ぞやといったタイプの哲学だけでなく、こうした分野の哲学もあるのかと新鮮に感じるし、面白い。でもやはり難しいから、ちゃんと理解できるように慎重に読み進めている。

様相論理

論理学において、必然や可能といった認識による推論判断にまで論理を拡張したのが様相論理である。 可能世界論によると必然(□)と可能(◇)は次のように定義される。 世界wから世界vに到達関係があることをwRv表すこととし、 □PとはwRvであるような全てのvにお…

論理学の練習問題

「がんばれば成功する。彼は成功した。ゆえに彼はがんばったに違いない。」 この推論は誤りである。 証明しよう。 「がんばる」をPと置き、「成功する」をQと置く。 「がんばれば成功する」はP→Qとなる。→は「ならば」を表す記号である。 P→Qの真理表は P Q …

論理学の練習問題

「ご飯を食べ過ぎると太る」と「ご飯を食べ過ぎかつ太らない、ということはない」は論理的に同じことを表している。 これは以下のように考える。 「ご飯を食べ過ぎる」という命題をPと置き、「太る」という命題をQと置く。 すると「ご飯を食べ過ぎると太る」…

「ちげーよ」という言い方について

近年(10年ぐらい前から)、「違うよ」を「ちげーよ」というのを耳にします(目にします)。もっぱら若い男性がぞんざいな言い方として使っています。 「違うよ [tʃigau-yo]」が「ちげーよ [tʃige:-yo]」になる、[au]が[e:]になるような音変化は普通は起こら…

最適性理論とロボット工学三原則

言語学の(主に音韻に関する)理論に最適性理論という理論があります。1990年代に現れてきた新しい理論です。 まだ勉強が進んでいないのでうまく説明しきれないのですが、あらましとしては、言語分析の常道だった「規則」や「派生」といった概念ではなく、「…

動詞の活用を語幹+接辞としてとらえなおす試み 古語編

前に、動詞の活用を語幹+接辞としてとらえなおす試み、で行った考察を、今回は古語において行ってみる。 動詞の「活用形」を、意味を持つ実体というよりも、不変の動詞語幹にさまざまな意味を表す接辞(助動詞、助詞、活用語尾などになって現れる)が接続し…

生成文法樹形図

窓際で寝ていた猫が雀を見つけてカカカと鳴きだした。 という文の構造を樹形図にしてみると下の図のようになる。(クリックで拡大) 記号については、 Nは名詞(Noun)。NPは名詞句(Noun Phrase)。図中の色分けは薄い黄色。 Pは後置詞(Postposition)、日…

動詞の「連用形」が名詞に接続する用法について

日本語の用言に「連用形」といわれる形態がある。他の用言に接続するときにこの形を取るところから「連用形」といい、文中で文を止めるときにもこの形をとる。 用言には「連体形」といわれる形態もある。体言(≒名詞)に接続するときこの形を取るから「連体…

形容詞の活用を語幹+接辞としてとらえなおす試み

以前書いた動詞の活用を語幹+接辞としてとらえなおす試みにならって、今度は形容詞の活用を語幹+接辞としてとらえなおす試みをやってみようと思う。 形容詞の活用パターンはク活用とシク活用の二種類しかない。実質的には一種類である。しかし解釈が難しい…

上代の助動詞「ふ」について

ふ (助動四型)《上代語》動作の反復・継続の意を表す。 1.反復の意を表す。何度も…する。 2.動作の継続の意を表す。…しつづける。 接続 四段動詞の未然形につく。 語法 「うつらふ」→「うつろふ」、「すすらふ」→「すすろふ」、「つづしらふ」→「つづし…

もっとも原始的な言語は何か

「原始的」とか「未開」というと誤解を招きやすいし差別的な印象にもなってしまいますが、他の言語には存在する人間の言語の基本的な特性がその言語にだけは発達していないという意味です。 人間の言語のもっとも重要な特徴は、併合とラベル付け、そしてそれ…

「おめこ」「まんこ」という単語について

女陰をいうのに、関西では「おめこ」、関東では「まんこ」、だったりするけれど、「おめこ」の「お」や「こ」、「まんこ」の「んこ」は、いずれも親しみを表す接頭語・接尾語だとすれば、語義の本体の部分(語根)は「め(me)」や「ま(ma)」だと考えられ…

「うまー」「すごー」「わるー」等の言い方について

近頃、くだけた言い方でたとえば うまい→うまー すごい→すごー わるい→わるー のようになるのが見られます。会話体の文章で見られることが多いです。 従来的(伝統的?)にはくだけた言い方だとたとえば うまい→うめー(うめえ) すごい→すげー(すげえ) わ…

日本語 タミル語 エトルリア語

下のリンク先に興味深い考察が書かれています。◆日本語・エトルリア語同祖論 http://giappone-etrusco.rejec.net/GiapponeEtrusco.pdf 日本語タミル語(ドラヴィダ語族)同系説が唱えられたことがありましたが、古代のイタリア半島で話されていた系統不明の…

言語学の大ざっぱな流れ

19世紀に比較言語学が誕生して、言葉を科学の対象として扱うことが始まった。 そこでの言語観は、言葉とは人間の意志にかかわりなく成立し、一定の法則にもとづいて成長・発展・衰退・死滅するとし、さまざまな言語の比較によりそれらの縁戚関係を明らかにし…

『複数の日本語 方言からはじめる言語学』

『複数の日本語 方言からはじめる言語学』工藤真由美・八亀裕美著(講談社選書メチエ)という本を非常に興味深く読んだ。 日本語の方言には、標準語(共通語)では表せない豊かな文法現象があって、標準語よりも多様に意味を表現することができる。その文法…

人類の言語は短期間で生まれた

言葉が異なって通じない者同士の間で、商売などを行うための最低限のコミュニケーションが取れるようにする必要から生じてくるごく簡易的な言語をピジン語という。それぞれの言語をミックスさせ文法もごく簡単にされた片言的な間に合わせ言語である。このよ…

音象徴・音表象

音象徴・音表徴とは、擬声語や擬態語など音がイメージを直接表しているようなものをいう。 動物の鳴き声を表す語もその一つであり、動物の名にはそのような音象徴に由来するものがみられる。ねこ・猫(マオ)、からす・crow、などは鳴き声からきているといわ…

ソシュール『一般言語学講義』の要点

ソシュール『一般言語学講義』の要点は、訳者小林英夫の解説において次のようにまとめられている。 1.ものをいう行為(langage)とものをいうために用立てる口頭的または書写体系(langue)は別個の事実であり、langage「言語活動」において、社会的部面で…

対格言語と能格言語

言語のタイプの分類に、対格言語と能格言語がある。 対格言語とは、「主語」である主格に対し他動詞の「目的語」が対格となって区別されるものをいう。 つまり、 太郎が(主格)次郎を(対格)殴る(他動詞)。 次郎が(主格)走る(自動詞)。 のような形式…

送り仮名の改訂案

動詞の活用を語幹+接辞としてとらえなおす試み、に基づいて、動詞の送り仮名を以下のように改訂してもいいのではないかと思った。つまり五段動詞で活用語尾の送り仮名とされているものの多くを漢字の方に繰り込んでしまうわけである。 一つのアイディア。 …

動詞の活用を語幹+接辞としてとらえなおす試み

語幹(五段動詞) 接辞 語幹(一段動詞) 接辞 接辞が表す意味 いわゆる活用形 例.聞く 話す 例.見る 寝る kik hanas -areru mi ne -rareru* 受動・尊敬・自発 未然形 kik hanas -eru mi ne -reru (2) 可能 〃 kik hanas -aseru mi ne -saseru* 使役 〃 ki…