言語学

今、『神から可能世界へ 分析哲学入門・上級編』を読んでいる

今、八木沢敬『神から可能世界へ 分析哲学入門・上級編』(講談社選書メチエ)を読んでいる。最近出た本である。神の存在証明といったことを軸に可能世界論(様相論理)を論じる内容のようだ。このシリーズは、初級編、中級編も読んだが、それらに比べるとぐ…

生成文法 上昇構文とコントロール構文

(1) 太郎がお酒を飲み過ぎた。 (2) 太郎が薬を飲み忘れた。 この二つの文は一見同じ構造の文に見えますが、実は異なった構造を持っています。(1)はもともと、 [ [太郎が お酒を飲み]過ぎた] という構造であり、すなわち[太郎がお酒を飲む]ということの…

久野翮『日本文法研究』の一節 「〜過ぎだ」について

久野翮『日本文法研究』(大修館書店)という本を読んでいたら、第9章にこういう記述があった。 動詞には状態的[+状態的]なものと非状態的[-状態的]なものがあって、[+状態的]な動詞は現在の状態を表し、[-状態的]な動詞は未来の動作・現在の習慣的…

論理学の練習問題 命題論理

スマリヤン『決定不能の論理パズル―ゲーデルの定理と様相論理』p.57に載っている練習問題3。命題p3が次の2つの命題の論理的帰結であることを示せ。(1) p1≡¬p2 (2) p2≡(p1≡¬p3) (解答) 命題XとYについて、X→Yが常に真ならばYはXの論理的帰結である。 (1)と(…

レイモンド・スマリヤン『決定不能の論理パズル ゲーデルの定理と様相論理』メモ

レイモンド・スマリヤン『決定不能の論理パズル ゲーデルの定理と様相論理』のp.23-27あたりに載っているパズルについてのメモ。解説が若干分りづらかったので表にして考えてみた。 必ず正しいことを言う騎士と間違ったことしか言わない奇人の二種類の住民が…

ボーカロイドは音声学の研究に使えるのだろうか?

ボーカロイドは音声学の研究に使えるのだろうか? いじってみなければ分からない。何かそういう例はないか。

いま『日本文法の系譜学―国語学史と言語学史の接点』を読んでいる

いま『日本文法の系譜学―国語学史と言語学史の接点』を読んでいる。なかなか面白い。読み終わったら感想を書く予定。日本文法の系譜学―国語学史と言語学史の接点 (開拓社言語・文化選書)作者: 斉木美知世,鷲尾龍一出版社/メーカー: 開拓社発売日: 2012/06/01…

「楽しい過ぎ」「嬉しい過ぎ」といった言い方について

本来「楽し過ぎ」「嬉し過ぎ」「面白過ぎ」などと言うところを、「楽しい過ぎ」「嬉しい過ぎ」「面白い過ぎ」などと言う用法が現れてきているようだ。そのような事例をネットで結構観察することができる。 これらは形容詞終止形にそのまま「過ぎ」をくっつけ…

専門書に誤植があると萎える

『基礎日本語文法 改訂版』(益岡隆志, 田窪行則著 くろしお出版)という本を読んでいたら、誤植と思われる記述があった。 p.17に次のような記述がある。 2 複合動詞は、また、前項が動詞としての性質を保持しているものと、動詞としての性質を一部または全…

言語学における共産主義と資本主義? 生成文法とコーパス言語学

『ベーシック コーパス言語学』という本を読んでいたら面白い記述がありました。 まず引用してみます。 Grefenstette(1998)は、普遍文法に対してコーパス文法を脱文法(no-grammar)と呼び、各々の研究者を共産主義と原理的資本主義に喩えます。普遍文法は、共…

レ足す言葉、レレ足す言葉

「見られる」「着られる」などが、「読める」「聞ける」といった可能動詞に引かれて、「見れる」「着れる」といった言い方になったのがラ抜き言葉である。すると今度はそれに引かれて、「読めれる」「聞けれる」といった言い方が現れてきた。これがレ足すこ…

二重目的語文

〜が〜に〜を〜する といったタイプの二重目的語文を考えてみよう。 スポーツ大会で優勝者に大会会長から記念品が贈呈されその際にファンファーレが鳴ったという状況があるとする。 そのときの、 (1) 会長は優勝者に記念品を贈呈した。その際にファンファー…

言語においては結合法則は成り立たない

足し算やかけ算では、 (a+b)+c=a+(b+c) (a×b)×c=a×(b×c) といった結合法則が成り立つが、言語においてはこうした結合法則は成り立たない。語を線状に足し合わせたのではすまない性質を持っている。 たとえば、 (1) 背の高い少年と少女 といった場合、異なっ…

二重主語文

(1) 田中さんが息子さんが大学に受かった。 のように「主語」(あるいは「主格」というべきか)が二つある(ように見える)文を二重主語文と言い、日本語の特徴の一つとされている。 こうした文は自分の感覚だと非文とまではいかないがかなり不自然な文に感…

タイムが伸びる?縮む?

水泳や陸上競技などで、能力や成績が向上し時間が縮んだこと(つまり速くなったこと)を、「タイムが伸びる」と言ったりする。字義通りには「タイムが縮む」でなければおかしいわけである。 これは、能力や成績の向上(良くなる変化)は伸びることであるとい…

論理学の練習問題 自然演繹 述語論理

(1) ∀x(Fx→Gx)├ ∃xFx→∃xGx ∀x(Fx→Gx) ────── 1 Fa→Ga Fa ──────── Ga 2 ──── ∃xFx ∃xGx ───────── 1 ∃xGx ────── 2 ∃xFx→∃xGx (2) ∃x(Fx→Gx) ≡ ∀xFx→∃xGx (a) ∃x(Fx→Gx) ├ ∀xFx→∃xGx 2 ∀xFx 1 ─── Fa→Ga Fa ──────── Ga ─── ∃x(Fx→Gx) ∃xGx ──────────── 1 ∃…

論理学の練習問題 自然演繹  命題論理

(1) ¬p∨q , p∨r├ q∨r(証明) 与えられた式は ¬p∨q≡p→q , p∨r≡¬p→r から p→q , ¬p→r├ q∨r となるので 1 1 p p→q ¬p ¬p→r ──── ────── q r ─── ─── p∨¬p q∨r q∨r ────────────── 1 q∨r (2) p→q , r→¬q├ p→¬r (証明) 2 1 p p→q r r→¬q ───── ────── q ¬q ───…

言語学の練習問題 自然演繹 述語論理

(1) ∃xFx├ ¬∀x¬Fx 1 ∀x¬Fx 2 ──── Fa ¬Fa ───────── ⊥ ───── 1 ∃xFx ¬∀x¬Fx ──────────── 2 ¬∀x¬Fx (2) ¬∀x¬Fx├ ∃xFx 1 Fa 2 ─── ¬∃xFx ∃xFx ─────── ⊥ ──── 1 ¬Fa ───── ∀x¬Fx ¬∀x¬Fx ──────────── ⊥ ────── 2 ∃xFx (3) ∀xFx├ ¬∃x¬Fx ∀xFx ─── 1 Fa ¬Fa ───…

論理学の練習問題 自然演繹 命題論理

(1) ¬(p∧¬q)├ p→q1 2 p ¬q ──── p∧¬q ¬(p∧¬q) ──────── ⊥ ─── 2 q ───── 1 p→q (2) p→q├ ¬(p∧¬q) 1 p∧¬q ─── 1 p p→q p∧¬q ────── ───── q ¬q ──────────── ⊥ ─────── 1 ¬(p∧¬q) (3) ¬p∨q├ p→q 1 2 p ¬p ───── ⊥ ─── 2 ¬p∨q q q ──────────── 2 q ───── 1 p→…

論理学の練習問題 自然演繹 命題論理 ド・モルガンの法則の証明

ド・モルガンの法則 ¬(p∧q)←→(¬p∨¬q) ¬(p∨q)←→(¬p∧¬q) 証明(1) ¬(p∧q)→(¬p∨¬q) 1 2,4 p q ──── 3 p∧q ¬(p∧q) ───────── ⊥ ⊥ ──── 1 ──── 2 ¬p ¬q ──── ──── q∨¬q ¬p∨¬q ¬p∨¬q ──────────────── 4 ¬p∨¬q ─────────── 3 ¬(p∧q)→(¬p∨¬q) (2) (¬p∨¬q)→¬(p∧q) 1 1…

論理学の練習問題 自然演繹 命題論理

(1) (p→q)∧(p→r)├ p→(q∧r) (p→q)∧(p→r) (p→q)∧(p→r) ─────── ─────── 1 1 p p→q p p→r ───── ───── q r ─────────── q∧r ────── 1 p→(q∧r) (2) (p→q)∨(p→r)├ p→(q∨r) 1 1 p p→q p p→r ──── ──── q r ─── ─── (p→q)∨(p→r) q∨r q∨r ──────────────── q∨r ──── 1…

山田正紀『神狩り』を読んでのメモ 論理記号について

山田正紀『神狩り』を読んだら、《古代文字》というものが重要なモチーフになっていて、その《古代文字》で書かれたテキストには二つの論理記号しか存在していず、通常の人間の言語は五つの論理記号を必要とするので、《古代文字》は人間の言語ではなく神の…

うそつきのパラドックス

うそつきのパラドックスとは、 (1) この発言は嘘である。 と言った場合、この発言は嘘なのか本当なのかという問題で、「この発言」とは(1)自体のことだとすると、(1)が嘘だとすると、嘘であるということが嘘となりすなわち(1)は本当ということになるし…

論理学の練習問題 述語論理

量化子の∀(全ての)と∃(存在する)に関し、∀x∃yf(x,y) と ∃y∀xf(x,y) の違いについて。 ∀x∃yf(x,y) は、日本語の文で表すと、全てのxについてf(x,y)であるyが存在する、 となり、 ∃y∀xf(x,y) は、同様に、あるyが存在し全てのxに対してf(x,y)である、 とな…

伊藤計劃『虐殺器官』を読んだ

伊藤計劃『虐殺器官』を読んだ。 (以下の記述は少しネタバレを含みます。) あらすじは、 舞台は2020年代ごろ。核テロによってサラエボが消滅し、インド・パキスタン間でも核戦争が起きている。先進諸国はテロを防止するためとして生体認証を駆使した管理体…

日本古代の色名

日本語には色の名前が豊富で素晴らしいと言われたりするが、それは後代に染色技術が発達してからの話で、古代には色を表す語彙は乏しかった。 日本古代の色名は、クロ、シロ、アカ、アヲ、の四つだったと考えられている。それも現代の、黒、白、赤、青、に対…

ふいんき

雰囲気(ふんいき)と書くつもりで「ふいんき」とタイプしてなぜか変換できないというのがネットの笑い話としてよくあるが、かなり前から関西などでは実際「ふいんき」という発音になっていたようである。ネットの時代になって目立って注目されるようになっ…

外来語の短縮形の法則

「コンビニエンス(ストア)」の短縮形はなぜ「コンビニ」であって「コンビ」ではないのだろうか、という疑問から、外来語が短縮されるとき、何か法則性があるのだろうかと考えてみた。 たとえば、「コンポ(ーネント)」とか「シンセ(サイザー)」とか「パ…

家族内での呼称

日本では家族内での呼称はその家族内の最年少者の視点に合わせるというよく知られた現象がある。 子供がいない夫婦は「あなた」「きみ」や名前で呼び合う、子供ができると「パパ」「ママ」「お父さん」「お母さん」といった呼び方になる、その子供も下の子供…

上代語の一人称の「ア」と「ワ」、日本語の人称システム

古代日本語では一人称とされる語に「ア」と「ワ」があった。使い分けとしては、「ア」は純粋な一人称であり、「ワ」は「話し手と聞き手」を共に指す「一人称+二人称」の人称だったとされる。(「聞き手」を含まない「私たち」という意味の一人称複数形とは違…